みなさんは時々聞く「案分」という言葉の意味をご存知でしょうか。そもそも「案分」という言葉はフリーランスや個人事業主の方はよく使いますがサラリーマンにはイマイチ縁遠い言葉ですよね。今回はそんな「案分」について詳しくご説明します。
そもそも「案分」とは?
サラリーマンにあまり馴染みのない「案分」(あんぶん)とは一体どんな言葉なのでしょうか?
「案分」の意味
「案分」とは、物品や金銭などを基準となる数量に比例して割り振ることを指します。
あまりピンと来ないですよね。
例えば大きな家を友人とシェアしていて、自分がその家の2割の面積を借りていた場合、光熱費はいくら払えば良いのでしょうか?多くの人が借りている面積に比例して光熱費の2割を払うのではないでしょうか。
この場合光熱費を基準となる面積に比例して割り振っているため「案分」していると言えます。
「案分」と「按分」の違い
「案分」と合わせて「按分」という漢字もありますので違いについてご説明します。
「案」という漢字が常用漢字であるのに対し、「按」は常用外漢字となります。どちらも意味は同じであり、間違いではありません。
一般的には「按分」という漢字を使うことが多いのですが、読みにくくわかりにくいことから「案分」と表記することもあります。
「案分」を英語で
案分」を英語にすると「distribution」です。意味合いは配分、配給、分配を表します。商業的にも経済的にも幅広い領域で使われます。
「案分」の類義語
日本語での「案分」の類義語をご紹介致します。
配分
「配分」は広域で物を等しく分ける時に使われる言葉です。「案分」は、ある基準を元に分けるニュアンスを持つことに対し、「配分」は等しく分ける場面で使われます。
配賦
「配賦」とは企業などで部品や製品などを対象とした費用を配分する際に会計上使われる用語となります。「案分」と大まかな意味合いはほぼ同じですが、「案分」の方が広い意味で使われます。また細かいニュアンスでは「配賦」は割り切れるものに使います。
折半
「折半」とは金銭などを均一に半分に分けることを指します。2つに分ける場合に使用する言葉は「折半」を使い、3つ以上の複数に等しく分ける場合には「等分」という言葉を使います。
「案分」を使った用語
次に「案分」を使った用語にはどのようなものがあるのか確認しましょう。
案分票
例えば選挙において苗字が同じ候補者が2名いた場合に、苗字のみを記載した投票用紙が入っていた場合どちらの票になるのでしょうか?
この票はこの2名の候補者の得票率に応じて比例配分されます。これを案分票と呼びます。
案分計算
個人事業主として働いている人は自宅を事務所として使用したり、プライベートで使用する車を営業車として使用することがあります。この場合自宅の賃料や車の維持費は個人事業主としての経費にできるのでしょうか。
そこで出てくるのが「案分計算」です。
このプライベートの生活費と業務上必要な経費を分ける計算のことを「案分計算」と呼びます。
「案分」を使った言葉はどんな場面で使う?
さて、あまり馴染みのない「案分」を使った言葉ですが、どんな場面で使われるのでしょうか。
案分票が話題になったニュース
最近の案分票が話題になったニュースをチェックしていきましょう。
同姓同名の「田中健」(静岡県)
2020年4月の衆院静岡4区補欠選挙で、無所属新人の田中健氏(42)とNHKから国民を守る党の田中健氏(54)が2人立候補しました。同姓同名のため年齢も記入してもらい区別する予定でしたが、氏名のみ記載した案分票が3708票ありそれぞれの得票割合で振り分けられました。
最終的には両氏とも落選しましたが、同姓同名が立候補した場合の案分票があまりにも多かったとして話題となりました。
同姓同名の「青木茂」(佐賀県)
こちらも2017年1月の佐賀県唐津市議選で、現職と新人で同姓同名の青木茂氏が立候補したということがありました。こちらは現新もしくは年齢を書くよう呼びかけられておりましたが、826票は判別が難しく案分票となりました。
最終的にふたりとも当選となりましたが、こちらも有権者が意図した候補者と異なる候補者に票が入っている可能性があるとして話題となりました。
「山本太郎」の案分票を「山田太郎」に割り振る(千葉県)
こちらは同姓同名ではありませんが、2019年7月に千葉県選挙管理委員会が参院選比例代表の開票ミスを発表したという話題です。れいわ新選組の山本太郎氏の案分票を自民党の山田太郎氏に割り振ってしまったという内容で、最終的な山本氏の落選・山田氏の当選・全候補者の当選に影響はないとのことでした。
山本姓の候補者が6人いたため、各候補の氏名をシステムに登録して案分する予定であったが、山本太郎と山田太郎を誤って登録してしまい山本太郎に案分された票が山田太郎の票として振り分けられてしまいました。原因は名前が似ていて間違ってしまったということです。
最終的に山本氏の落選と山田氏の当選含め全候補者の当選に影響はないとのことでしたが、こちらも同姓同名ではないにもかかわらず誤りがあったとして話題になりました。
案分計算はどのようにして行うか
次に案分計算の具体的な方法についてご説明します。
水道光熱費は使用時間、コンセントの数で計算
そもそも水道光熱費に該当するものは以下のものになります。
- 電気料金
- 水道料金
- ガス料金
個人事業主の場合、自宅と事務所を兼用で使っているということが多いと思いますが、この場合水道光熱費は案分して経費計上することができます。
電気料金は基本的に使用している時間やコンセントの数で計算することが多く、経費として計上することが認められておりますが、水道料金やガス料金は少し複雑です。水道やガスは業務として使用することが少ないためごくわずかしか認められない、もしくは全く経費として認められなかった事例も一部あります。
経費計上可能かどうかは事前に税理士もしくは税務署に相談しましょう。
駐車代やガソリン代は車の使用日数、利用距離で計算
たとえばプライベートで購入した車を仕事に使うこともありますよね。その場合駐車代やガソリン代は案分計算して経費として計上することが可能です。案分の仕方は一般的に車の使用日数もしくは利用距離で計算されることがほとんどです。
一か月で200km走行してそのうちの150kmを業務上で使用した場合、ガソリン3,000円のうち2,250円は経費として計上することが可能
業務上必要と客観的に認められない諸経費などは案分計算できない
ここで注意しなければいけないのが、業務上必要と認められない諸経費は案分して経費計上することが認められておりません。
- 業務上必要だと感じられない諸会費、旅費
- 家族のみが従業員の慰安旅行
- 家族のみが従業員の慶弔費
上記の共通点は業務上必要であるという証明ができないという点です。業務に必要だから経費として認めるのであって、一般の家族旅行と変わらないような慰安旅行などは経費として認められるものではありません。
「案分」を使った言葉で大人への第一歩を!
「案分」という言葉について、理解が深まったでしょうか?言葉としての意味から派生した言葉、案分計算の方法まで幅広くご紹介しました。
社会人として「案分」について詳しく知っている人は意外と少ないと思います。会議やニュースなどで案分という言葉が出てきた時にきちんと理解できるように、今のうちに勉強しておきましょう。
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