企業や組織が発展し続けるには、イノベーションは欠かせないものです。ビジネス現場では必ず聞いたことがある言葉のうちの1つではないでしょうか?
今回は「イノベーション」という言葉の意味や広まった背景、事例も併せて解説していきます!
「イノベーション」とは?
ざっくり言うと、「イノベーション」は「革新」という意味で、新たなものを創造し変革を起こすことで経済や社会に価値を生み出すことを指します。
また、「イノベーション(innovation)」は外来語であり、「技術革新」「新機軸」と日本語で訳されます。
さらに、企業にとっての「イノベーション(innovation)」とは、これまでにない新しいサービスや製品などを生み出すという意味でもあります。
語源はラテン語の「innovare」です。innovareには「新たにする」「リニューアルする」などの意味があるのです。
「イノベーション」の定義とは?
「イノベーション」は日本語ではよく「技術革新」と訳されますが、本来は技術に限らず広い概念を持っています。
- モノ
- 仕組み
- サービス
- 組織
- ビジネスモデル
など、新たな考え方や技術を取り入れて新しい価値を生み出し、社会に大きな「革新」「刷新」「変革」をもたらす、それが本来の「イノベーション」の意味です。
その元となったのが、オーストリアの経済学者であるヨーゼフ・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter)氏が発表した「経済発展の理論」です。
「経済発展の理論」において、「イノベーション」を「新結合」という言葉を用いて「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」と定義しました。
※経済発展の理論について詳しく知りたい方はこちら
新結合とは、柔軟な発想の元に組み合わせたり改良したりすることによって、新たな価値を創造するという意味です。
「イノベーション」が広まった背景、理由とは?
かつては、クローズドイノベーションと言われる、自社の経営資源だけで研究開発から製品開発までを行う自前主義が主流でした。
クローズドイノベーションはこれまで日本では多くの企業が採用していた経営手段であり、研究開発から製品開発まで一貫して自社リソースのみで新製品・サービスを提供する「イノベーション」です。
しかし1990年代に入り、インターネットやテクノロジーの爆発的な発展から、グローバル化や産業構造の変化、人材の流動化が進み、市場競争が激化しました。
そのため、大手企業でも自社リソースのみで「イノベーション」を起こすことは難しくなり、次第に外部資源やノウハウを活用するオープンイノベーションが注目され始め、現在も広がってきているという状況です。
現在はオープンイノベーションが主流ですが、新興国や発展途上国に研究所などを設けて新たな価値を創造するリバースイノベーションにも注目が集まっています。
※リバースイノベーションついて詳しく知りたい方はこちら
「イノベーション」の特徴と類型を分かりやすく説明
「イノベーション」は、市場と技術に与えるインパクトによって4つに分類されるという考え方があります。
次は「イノベーション」のそれぞれの特徴についてご紹介していきます。
構築的革新
構築的革新は、斬新な技術を用いてこれまでの体系を破壊し、新たな製品の開発や発明によって全く新しい市場を生み出すものです。
例えば下記などが「構築的革新」にあたります。
- 電気
- 蒸気機関
- 飛行機
- 一般大衆向け自家用車「T型フォード」
- パソコン
革命的革新
革命的革新は、既存の製品に新しい技術や生産体系を用いて生み出した新たな製品のことを指します。
代表的な例としては以下が挙げられます。
- マニュアルからオートマチックへ移行(自動車の駆動)
- 既存のものより少ない量で汚れが落ちる洗剤
- オーディオの音声信号が、アナログからデジタルへ移行
- モバイル通信システムが、4Gから5Gへ移行
- 高齢者介護ロボット(将来的に期待されるもの)
間隙(かんげき)創造的革新
間隙(かんげき)創造的革新は、既存の技術を用いて新たな市場を生み出す「イノベーション」のことで、ニッチ創造とも呼ばれます。
代表的な製品としては以下が挙げられます。
- ヘッドフォンステレオ
- 家庭用ゲーム機(Wiiなど)
- iPhone、iPad、iPod(アップル社)
また、創業時から変化して間隙創造的革新に至ったものもあります。
YouTubeが代表例で、もともとは動画ビジネス市場の先駆者として革命的革新に分類されていましたが、Googleによる買収によって新たなビジネス的価値(広告モデル)を生み出し、新たな客層を獲得したことも有名になっています。
通常的革新
通常的革新とは、技術やプロセスを改善し安いかつ、高品質なコストパフォーマンスの良い製品・サービスを創出するものを指します。
そのため、既存の技術と既存の市場の中で生まれる「イノベーション」とも言われています。
既存製品の性能を向上させ、価格競争によって対応するものがこれに当たり、1980年代の日本企業ではこうした形の「イノベーション」が主流でしたが、価格競争に陥ると失敗する場合もあります。
競争の激しい市場で争うことを「レッドオーシャン」とも言いますが、その状況で通常的革新を続けていては企業が疲弊しやすいですし、骨のいることなのであまりおすすめはしません。
「イノベーション」はどのような役割を果たすのか?
続いて、「イノベーション」が実際にどのような役割を果たすのかを見ていきましょう。
プロダクション・イノベーション(新しい財貨の生産)
新たなものを発明したり開発したりすることをプロダクション・イノベーションと言います。
分かりやすく例えると、肌着に冷感機能などをつけたエアリズム(ユニクロ)などがプロダクション・イノベーションに当てはまります。
プロセス・イノベーション(新しい生産方法の導入)
画期的な方法で生産スピードの向上、生産工程の簡略化などを実現することをプロセス・イノベーションと言います。
分かりやすく例えると、人員を増やして役割分担をしたり、作り方をマニュアル化したりすることで、誰でも同じクオリティのものが作れるようになり生産性が上がった、などという内容が「プロダクション・イノベーション」に当てはまります。
マーケット・イノベーション(新しい販売先の開拓)
社外販売や、代理店に委託販売してもらい、新しい販売先を開拓することをマーケット・イノベーションと言います。
分かりやすく例えると、自社商品をデパートやスーパーなどに売り込み、デパートやスーパーなどに代わりに売ってもらうことが「マーケット・イノベーション」に当てはまります。
サプライチェーン・イノベーション(新しい供給源の開拓)
商品を作るための原材料の買い付け先や、仕入れ方法などを新たに開拓することをサプライチェーン・イノベーションと言います。
分かりやすく例えると、既存の仕入れよりもコスパの高い仕入れ先に変更する、といった内容が「サプライチェーン・イノベーション」に当てはまります。
オルガニゼーション・イノベーション(新しい組織の実現)
他の会社と契約したりして新たな組織を作ったりすることをオルガニゼーション・イノベーションと言います。
分かりやすく例えると、フランチャイズチェーン展開している企業が、他の企業と契約を結び協力することで、さらなる組織の拡大を図ることが「オルガニゼーション・イノベーション」に当てはまります。
最近話題の「イノベーション」事例(2018~2019)
次は、最近話題になった「イノベーション」を事例と共にご紹介していきます!
プロダクトイノベーションの事例(製品革新の事例)
プロダクトイノベーションの代表例はウォークマンではないでしょうか?
小型で持ち運びができるカセットプレイヤーは、それまでなかった外で音楽を楽しむという新しい文化を生み出し、その後のポータブル音楽プレイヤーの先駆けとなりました。
最近ではウォークマン以外にどんな「イノベーション」があるのか、事例を見ていきましょう。
P&Gジェルボール型洗剤は、「計量する手間が省ける」という単に時短という視点だけでなく、家事の中でストレスと感じる「計量や詰め替えのこぼれた時に拭く手間」について着目し開発され、発売3年間で約1億個以上売り上げた商品です。
俳優の生田斗真さんがCMで紹介しているものですね。
値段はふつうの液体洗剤と比べて少し高い印象ですが、「時は金なり」の人にとっては買ってみたくなる商品なのではないでしょうか?
メガネ=視力矯正という考えを変えたイノベーション事例です。
パソコンやスマホからブルーライトが多く発生していることに着目し、JINSはそのブルーライトをカットするJINS PCを開発しました。
これによりメガネは視力矯正の役割だけでなく、「目を守るもの」という新しい常識を創造し、注目を集めています。
一日中パソコンと向き合って仕事をする人等にとっては一石二鳥のうれしい商品ですね!
スマホからたった2タップでハイヤーやタクシーを配車できる、圧倒的な顧客体験を実現した配車アプリのUber。
アプリを使って自分の好みの車を予約し、GPSにより自分の現在地などの迎車する位置に近いタクシーを地図上で探しマッチングすることで、正確な時間と場所に車が迎えに来るというシステムです。
また、画面上には到着までの所要時間や、目的地までの概算料金も提示され、運賃の支払いには事前に登録したクレジットカードのみで行うため、現金支払いに手間を取ることがないので快適ですね!
日本ではジャパンタクシーなどが有名なのではないでしょうか?一度Uberと乗り比べしてみるのもおもしろいですね!
プロセスイノベーションの事例(工程革新/製法革新)
プロセスイノベーションとは、業務の過程・工程をこれまでの延長上にはない革新的、画期的な仕組みに改めることや、工程における革新のことを言います。
こちらも最近の事例を見てみましょう!
インターネットで服を購入する際、一番気になるのは「本当にこのサイズが自分に合っているのか?」というところではないでしょうか?
画像だけではサイズは分からないし、サイズ表記は同じでもメーカーやブランドによって製品のサイズが異なる。
ですが、「ZOZOスーツ」は伸縮センサーを内蔵した採寸ボディスーツのため、スーツを着るだけで、ジャストサイズの服を簡単に探すことができるのです!
これなら今まであんなに悩んでいたサイズ問題も解消されそうですね!
トヨタでは、生産計画に応じて「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」供給できれば、「ムダ、ムラ、ムリ」がなくなり生産効率が向上するのではないかという考え生まれたものです。
トヨタの生産方式のジャストインタイムの元となった、「かんばん方式」は必要な部品を、必要なときに、必要な量だけを前工程に取りに行くことで、今までの前工程がムダに部品を多く造り、後工程に貯めてしまうという、非効率な生産性を改善することができたという事事例です。
生産性を高めたり、リードタイムを短縮したいという目的がある企業にはもってこいの方式ですね!
SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)は、アパレル業界の「イノベーション」で、製造小売ともいい企画から製造、小売までを一貫して行うアパレルのビジネスモデルです。
ユニクロはこのモデルを採用し、消費者の好みの移り変わりを迅速に製品に反映させ、売れ残りのリスクを減らしかつ、多店舗で多くの商品を売ることで大幅な価格の引き下げを実現しています。
天下のユニクロはこうして売上を伸ばしていってるんですね。
イノベーション改革をして新しい価値を生み出そう
今までは「技術革新」と訳されることは多かった「イノベーション」ですが、昨今では新しい物事の創造により、社会に価値をもたらす・変化を起こす、という定義で使われています。
ビジネスパーソンとして、常に「イノベーション」の概念の視点を持って日々の取り組みに取り入れていきたいですね!
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