「クッション言葉」ってご存知でしょうか?
クッション言葉とは、「差し支えなければ」や「お手数ですが」など、相手に何か伝えるときに使われる言葉です。「ビジネス枕詞」なんて言われたりもします。直接的な表現を避け、丁寧な印象をあたえることができるので、相手に不快な思いをさせないことはもちろん、自分が何かお願い事を伝えるときなどの心理的負担も軽くしてくれます。
会話のテクニックとして、コールセンターなどでも使われています。電話やメールでは特にお互いの顔が見えない分、こういった気遣いが重要になります。
ですが、頭に入れておかないと、会話中とっさに言葉が出てこず失礼な物言いになってしまった、ということもしばしば・・・。意識せずにクッション言葉を使っている人もいると思いますが、間違った使い方をすると逆効果になってしまいます。
特にビジネスシーンでは、活用できる場面が少なからず出てくるので、正しく使えるようにしておきましょう。
クッション言葉を使う場面と例
相手に何を伝えたいかによって、使うクッション言葉も変わってきます。ここでは特によく使う場面と、それに使えるクッション言葉を紹介していきます。
・なにか尋ねたいとき
差し支えなければ
よろしければ |
差し支えなければ、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか。 |
失礼ですが | 失礼ですが、身分証はお持ちでしょうか。 |
お尋ねしたいのですが
お伺いしたいのですが |
少しお尋ねしたいのですが、〇〇さんはこちらにいらっしゃいますか。 |
・なにかお願いするとき
早速ですが | 早速ですが、こちらをご覧ください。 |
恐縮ですが
恐れ入りますが |
お忙しいところ恐縮ですが、ご確認をお願いいたします。 |
お手数をおかけしますが | お手数をおかけしますが、ご対応のほどお願いいたします。 |
ご都合がよろしければ
ご迷惑でなければ |
ご都合がよろしければ、お伺いさせていください。 |
勝手ながら | 勝手ながら、◯日までにご返信ください。 |
・謝るとき
ご不便をおかけして
ご迷惑をおかけして |
ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません。 |
・断るとき
申し訳ございませんが
あいにくですが 残念ながら |
申し訳ございませんが、こちらではわかりかねます。 |
せっかくですが
申し上げにくいのですが |
せっかくですが、今回はお断りさせていただきます。 |
・反対意見を述べるとき
仰ることはわかりますが | 仰ることはわかりますが、こちらの優先順位のほうが高いと思います。 |
お言葉を返すようですが
差し出がましいようですが |
お言葉を返すようですが、△△さんの意見は矛盾していると思います。 |
・援助を申し出るとき
もしよろしければ
お力になれることがあれば |
もしよろしければ、お手伝いをさせてください。 |
同じ場面で使えるクッション言葉は複数あるので、会話や文章の流れによって適切なフレーズを選びましょう。上記のような基本のクッション言葉に、状況によって「誠に」「大変」「ご多用中」「お忙しいところ」「お急ぎのところ」「是非」などを組み合わせるとバリエーションも広がります。
クッション言葉を使う場合・使わない場合の印象の違い
クッション言葉を使うと使わないでは、相手に与える印象が大きく違います。シーンごとに違いを見比べてみましょう。
メール
〈クッション言葉なし〉
お世話になっております。
○○○株式会社の○○○でございます。
先日はご来社いただきまして、ありがとうございました。
本メールにお申込書を添付しておりますので、ご確認をお願いいたします。
また、ご記入いただきましたら弊社までご返送くださいませ。
〈クッション言葉あり〉
お世話になっております。
○○○株式会社の○○○でございます。
先日はお忙しいところご来社いただきまして、ありがとうございました。
本メールにお申込書を添付しておりますので、ご確認をお願いいたします。
また、お手数をおかけし恐縮ですが、ご記入いただきましたら弊社までご返送くださいませ。
電話
〈クッション言葉なし〉
先方:○○さんはいらっしゃいますか?
自分:○○はただいま席を外しております。
戻り次第○○より折返しご連絡させていただきます。
先方:わかりました。よろしくお願いいたします。
〈クッション言葉あり〉
先方:○○さんはいらっしゃいますか?
自分:申し訳ございませんが、あいにく○○はただいま席を外しております。
よろしければ、戻り次第○○よりご連絡させていただきます。
先方:わかりました。よろしくお願いいたします。
対面
〈クッション言葉なし〉
自分:いらっしゃいませ。ご予約はされていますか?
お客:いえ、してないです。
自分:かしこまりました。
では、こちらの用紙に記入をしてお待ち下さい。
〈クッション言葉あり〉
自分:いらっしゃいませ。失礼ですが、ご予約はされていますか?
お客:いえ、してないです。
自分:かしこまりました。
では、お手数ですがこちらの用紙に記入をしてお待ち下さい。
〈クッション言葉なし〉の場合でも日本語としてはおかしくないですが、クッション言葉を挟むことで会話の流れが滑らかにもなりますし、やはり印象も良くなります。
友達や身内などの親しい相手にクッション言葉を使うのは逆に煩わしく必要のない場合がほとんどですが、ビジネスシーンとなると相手との距離が一定以上あるのが普通です。ビジネスでのやり取りにはとても効果的に用いることができるのです。
クッション言葉が逆効果になることも・・・
会話を円滑に進めるために便利なクッション言葉ですが、使い方を誤ると逆に相手を不快にさせてしまうこともあります。クッション言葉を使う際には、以下のようなことに気をつけましょう。
ちぐはぐなクッション言葉は使わない
頼み事をするのに、たとえば「申し訳ございませんが、こちらの返却をお願いいたします」と言うのは変です。なにか自分がミスをした結果の頼み事でなければ、特に謝る必要はありません。この場合だと、「お手数ですが」や「恐れ入りますが」などが適切です。
相手に何を伝えたいのかを考え、それに応じてクッション言葉を選ばないと、不自然な日本語の文章になってしまうので注意しましょう。
多用しすぎない
同じクッション言葉を何度も使ってしまうのもNGです。しつこく、へりくだりすぎという印象を与えてしまいます。
たとえば、入ったお店の受付でこんなふうに対応されるとどうでしょうか?
恐れ入りますが、ご予約はされていますか?
恐れ入りますが、こちらにご記入をお願いいたします。
恐れ入りますが、そちらにおすわりになってお待ち下さい。
丁寧ではありますが、しつこい感じがしませんか?人によっては嫌味にすら感じるでしょう。
この場合は
失礼ですが、ご予約はされていますか?
お手数ですが、こちらにご記入をお願いたします。
そちらにおすわりになってお待ち下さい。
というふうに、余計なクッション言葉を省いたり、できるだけ別のフレーズを用いればOKです。
特に会話中は、口をついて出てくるクッション言葉がワンパターンになってしまいがちですので、普段から使えるフレーズを頭の中にストックしておきましょう。
マニュアル化してしまわない
クッション言葉を使い慣れてしまうあまり、マニュアル化してしまい、言葉に心がこもっていないということがよくあります。不思議なことに、そういうときはたいてい相手に「惰性で使ってるな~」となんとなく伝わっているものです。
電話や対面での会話の場合は、クッション言葉に抑揚をつけたり、間をあけたりと工夫してみましょう。
毎日のように使う言葉ではありますが、とりあえずつけておけばいいやという感覚で使うのではなく、気持ちを込めて使うことが何より大切です。
相手に不快感を与えないために
会話やメールの中で相手に不快感を与えないために、クッション言葉とあわせて敬語表現や語尾に気をつけることも必要です。
たとえば
「失礼ですが、お名前をおしえてください。」
→ 「失礼ですが、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか。」
「どうぞ、気をつけて来てください。」
→ 「どうぞ、お気をつけてお越しください。」
後者のほうが丁寧に感じますよね。少し言葉を変えるだけで相手に与える印象は格段に違ってきます。
やりすぎはもちろんだめですが、クッション言葉だけでなく、文章全体に気を配ることでより相手からの印象アップを狙えます。
敬語表現については以下の記事も参考にしてみてください。
英語のクッション言葉
英語の中にもクッション言葉は存在します。ビジネスで英語を使うことがあるひとは是非覚えておくと良いでしょう。
・なにか尋ねたいとき
差し支えなければ | If you don’t mind me asking |
失礼ですが | May I ask〜? |
お尋ねしたいのですが
お伺いしたいのですが |
Would it be possible to ~ |
・なにかお願いしたいとき
お願いします | Please |
恐れ入りますがお願いできますか? | Could you do me a favor? |
お時間を取らせてすみません | Please take some time to |
ご迷惑でなければ | If it’s not too much trouble |
・謝るとき
残念ですが | I’m afraid (that)
I’m afraid I can’t Unfortunately |
大変申し訳ないのですが | I am terribly sorry, but
I am thankful for your kind intentions, but |
申し上げにくいのですが | If I may be so hold |
・断るとき
残念ですが | I’m afraid (that)
I’m afraid I can’t Unfortunately |
大変申し訳ないのですが | I am terribly sorry, but
I am thankful for your kind intentions, but |
申し上げにくいのですが | If I may be so hold |
・反対意見を述べるとき
仰ることはわかりますが | I can see your point, but
I can see what you are saying, but |
差し出がましいようですが | In my humble opinion |
お言葉を返すようですが | With all due respect
I’m sorry to contradict you, but |
日本語と同じように、英語でクッション言葉を使おうとすると、同様の意味でも複数の言い回しがあります。
英語には敬語表現がないので、きつい言い方になりがちです。命令形でも「Please」をつけたり、「Can you ~?」ではなく「Could you ~?」という丁寧な表現を心がけるなど、クッション言葉をワンフレーズ入れることで、それを緩和することができます。
まとめ
クッション言葉は「このフレーズ」がくると「あの語尾」というように、まさに枕詞として機能します。フレーズの選択を間違うとその機能が失われるだけでなく、逆効果として働いてしまいます。
ですが、言い方は一つではなく、組み合わせによっては様々な言い回しが可能です。できるだけクッション言葉の引き出しを増やしておいて、会話の中で自然に使えるようにしておきましょう。
ビジネスの中では、なかなか相手に言いづらいことを伝えなくてはいけない場面も多々あると思います。クッション言葉を上手に使いこなして、コミュニケーションを円滑に進めましょう。
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