安定した転職先を模索していく中での1つの候補として挙げられる公務員。その中でもドラマや映画等で見る火災現場の救助活動で活躍する姿に憧れて消防士を目指す人も少なくないでしょう。体力が勝負の仕事と思われがちですが、消火活動・救助だけが仕事ではなく事務作業も多くあり、いざなろうと思っても当然ながら試験内容には筆記試験も存在します。
ここでは中途から消防士採用試験に合格するために必要なノウハウを紹介していきます。中途から消防士を目指す方はぜひ参考にしてみて下さい。
消防士の実態について知ろう!
正式には消防士は階級名の1つで職名としては「消防吏員」にあたります。消防士は公務員の中でも人気職ですが、火災発生時の人命救助のためには体力と消防に関する幅広い知識・技能が必要になります。消防士になるための特別な資格は必要ありませんが「消防士採用試験」に合格する必要があるため、しっかり準備をして臨みましょう。
消防士の仕事内容
消防士の仕事内容は大きく分けて5つあります。ただ下記の活動以外にも訓練や事務作業があるため出動要請がなくても忙しい職場です。
消化活動
消防士の仕事の中で最も認知されている火を消す仕事です。火災自体は頻繁に起こるものではないため、いざ火災が起きたときのため消防士は日頃から訓練を行い24時間体制で備えています。
救助活動
災害時に現場に直行し人命救助を行う仕事です。家事はもちろん交通事故や山地、河川での救助活動もこれにあたり近年の大型地震等でも最前線での活躍を求められるため体力的・精神的にもかなり厳しいものになります。
救急活動
119番通報を受けてから救急車で急病人を搬送する仕事です。消防士の仕事の中でも救急活動が多くの割合を占めており一日に10回以上出動することも珍しくありません。
防災活動
災害時に備えての消化器やAEDの使用法を地域住民に教えたり火災の知識を共有する講習を開いたりします。
予防活動
施設に置いてある消防用設備が正常に動くかの点検や施設自体の防火上チェックが主な活動になります。
消防士の年収
消防士の年収は高卒・大卒でも大きく変わりますが、30代で平均年収は600万円、40代になると700万円を超え50代では800万円以上と民間の平均と比較して非常に高いです。消防士の給与が高い理由として火災現場では怪我のリスクもあり最悪の場合は殉職の可能性もありまた火災や災害の通報時はいつでも出動する必要があるためです。
消防士の待遇
消防士には給料の他に緊急出動の場合、下記のような特殊勤務手当がつきます。
- 不快作業手当
- 重勤務作業手当
- 非常災害業務手当
- 消防業務手当
そのため出動が多い地区では必然と手当がたくさんつき給料が高くなる傾向があります。また東京都の場合は福利厚生施設を利用できたり結婚や疾病、家庭内での就学など給付金を受け取ることも出来ます。
消防士の大変なところ
消防士の大変なところはもちろん業務中での怪我や殉職のリスクがあるのはもちろんですが上下関係が厳しく閉鎖的な体育会系組織のためストレスが非常に多いことも挙げられますが離職率は民間と比べると圧倒的に低く0.6%(平成28年地方公務員退職状況調査より)となっており、やはり「公務員は安定している」といえます。
中途で消防士になるために必要なこと
高卒や大卒1年目から消防士になる場合は学生時代にそれなりに準備期間はありますが社会人となると仕事に時間を割かれてしまい、いざ転職しようと思っても準備不足で試験不合格なんてこともあります。そうならないために中途ならではの事前に知っておくべきことを紹介します。
消防士採用の中途と新卒の違い
消防士における新卒と中途の違いですが、そもそも消防士採用には「受験枠」、「年齢制限」があるため例えば30代から消防士になりたいと思っても不可能です。
「受験枠」は「大卒」「短大卒」「高卒」の3つが用意されているケースが多いです。「年齢制限」は自治体によってまちまちではありますが「大卒」で基本的に30歳未満が対象となるため注意が必要です。理由としては業務上必要な体力的要素が大きいためです。
消防士に向いている人
消防士に向いている人ですが過酷な現場での作業になることが多いため「体力に自信がある人」は向いているといえるでしょう。また緊急時での現場対応が必要になるため「冷静な判断力」を持ち上司の指示に従い適切に行動出来ることも重要な資質です。
消防士の求人倍率・合格率
消防士採用試験は難易度によって3つの採用区分が分かれておりⅠ類(大卒程度)」で約5~10倍程度、「Ⅱ塁(短大卒程度)」で約11倍、「Ⅲ類(高卒程度)」は約13倍の倍率です。中でも東京消防庁は人気のため採用人数が多く、上記以上に倍率が高くなる傾向があります。
消防士の資格・採用について
消防士の資格は既出したとおり特別必要なものはありませんが消防士の中の「救急救命士」として働く場合は「救急救命士国家試験」に合格しなければなりません。そういった特殊な環境を除き「消防官採用試験」を受験するための受験資格を紹介していきます。
消防士採用試験概要・受験資格
採用試験の受験資格・年齢制限は自治体によって異なるため東京消防庁を例に紹介していきます。
◆年齢制限
- Ⅰ類:22歳以上30歳未満、または21歳以下の大学卒業者(卒業見込も可)
- Ⅱ類:20歳以上30歳未満
- Ⅲ類:18歳以上30歳未満
- 専門系:Ⅰ類と同様
◆身体的受験資格
- 身長:160cm以上
- 体重:50kg以上
- 握力:40kg以上
- 胸囲:身長のおよそ半分以上
- 聴力:正常
- 肺活量:3000cc以上
- 視力:裸眼視力0.3以上かつ色覚が正常
消防士採用試験1次試験(東京消防庁の場合)
消防官として必要な一般教養について大学卒業程度の筆記試験となります。東京消防庁の一次試験(平成30年)は下記の通りとなっています。
教養試験
消防官として必要な一般教養について、Ⅰ類は大学卒業程度、Ⅱ類は短大卒業程度、Ⅲ類は高校卒業程度の筆記試験を行います。教養試験は5つの選択肢の中から正しい、もしくは誤りを選ぶ「五肢択一式」で行います。出題範囲が幅広いため対策はまんべんなくおこないましょう。7割以上正解であれば合格の可能性は高いです。
論文試験
課題式により、Ⅰ類及びⅡ類は論文試験、Ⅲ類は作文試験を行います。(800 字以上 1,200 字程度)課題に対しての論理的思考力、文章構成能力などを見ており「消防士としての心構え」や「災害に対する現状の課題や対応策」などについて論述します。
適性検査
消防官としての適正について検査します。内容としては作業効率や正確性を測るクレペリン検査や自分の性格や行動の質問に答えるY-G検査が一般的です。特に対策は必要はないですが正直に答えるようにしましょう。
消防士採用試験2次試験(東京消防庁の場合)
体力検査
1km走、反復横とび、上体起こし、立ち幅とび、長座体前屈、握力、腕立て伏せにより体力を検査します。消防士は体力勝負であるためトレーニングは必須です。社会人となると運動不足になりがちですが試験に向けて運動することを心がけましょう。
口述試験
個人面接を行います。自治体によっては集団面接や両方行われることもあるので事前に必ずチェックしましょう。面接試験では教養試験や論文試験では見れない人物像を評価するために行われ二次試験にて実施されることが一般的です。
合格後の流れ
平成29年時点東京消防庁での消防士採用試験の受験者数は20,497人に対して合格者は795人と合格率としては4%程度です。(東京消防庁調べ)
合格後は「合格者名簿」に登録後に「消防学校」に入校します。卒業後はめでたく「消防官・消防士」となります。ただ名簿に登録されても正式に採用されるわけではなく試験結果の成績が高い順に採用されるため合格者が全員は採用されるわけではありません。
消防士採用試験に合格するためのおすすめ勉強法
中途から消防士を目指す上で仕事をしながらの試験対策は大変です。自分で独学で行うにもどのように対策したらいいか分からないという人のためにおすすめの参考書・予備校を紹介します。
筆記試験対策
教養試験の勉強法としては独学での勉強、予備校に通うかが挙げられます。出題範囲が高卒・大卒にあたるため忘れてしまった場合は基本的な内容からおさらいしましょう。試験難度は公務員試験の中では易しめのため基本的な参考書の内容をしっかり理解し繰り返し過去問に取り組むとよいでしょう。
体力試験対策
消防士の試験では筆記試験だけでなく当然ながら体力試験もあります。筆記・面接対策に注力しすぎて体力強化を怠らないように日々鍛えておきましょう。
- 握力測定
- 上体起こし(腹筋)
- 腕立て伏せ
- 長距離走(シャトルラン)
- 懸垂
- 長座体前屈
面接試験対策
筆記試験、体力試験と続き面接試験が最終試験となるケースが多いですが最後だからといって気を抜かず事前にしっかりと対策しましょう。質問と回答を予め想定し答えられるよう準備することは重要ですが最終的にはいかに「消防士になりたいか」という自分の思いを伝えられるかの熱意ですのでその熱意を20分程度の時間内でしっかりまとめましょう。
おすすめ予備校・通信講座
忙しい社会人にとって仕事の合間に時間をとって独学ではうまく勉強が進まないといった人もいるでしょう。効率よく試験対策を行うためには予備校や通信講座を活用するのも一つの手です。
おすすめ予備校①
教養試験だけではなく面接や論文対策まで幅広く万全サポートしてくれる予備校です。
受験生一人ひとりにあった最適なプランスケジュールを作成してくれますので忙しい社会人にとっては無駄なく試験対策を行うことが可能です。
おすすめ予備校②
生講義を強みとしている予備校です。消防官試験以外にも教員や看護師、管理栄養士などの国家試験にも対応しておりDVDやWEBの映像授業では集中できない人や即座に質疑応答が出来る環境がほしいといった人に向いています。
おすすめ通信講座
忙しい社会人にとっては時間がない、予備校でなく一人で集中したいという人もいるでしょう。大原の通信講座では教材のみで自分のペースで進められるコースの他に通学性のようにしっかりとしたフォローサポートを受けることができるコースがあります。自分のやり方やペースに合わせて選択できるのでおすすめです。
まとめ
倍率は低くはないですが中途からでもしっかり対策することで消防士になることは十分可能です。当然それ相応に努力は必要ですが、中途だからといって諦める必要はありません。本気で消防士を目指したいのであれば努力次第で結果はついてきます。ただし年齢制限がありますので目指すのであればすぐに行動に移しましょう。
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